はるまで、くるる。 プレイメモ1

久しぶりにとんでもない作品に出会ってしまったようです。『はるまで、くるる。』。いやですねプレイはじめてまだ一時間たったかどうかくらいなんですけど(メモ取ったり画面キャプしまくったりしているので正確なプレイ時間がよく分からない)、これまでのところ超絶傑作というか、この調子で期待にこたえてくれればマイ歴代エロゲランキング第1位に輝いてもおかしくないくらいのポテンシャルを発揮しちゃっています。いやここからどれだけ期待に応えてくれなくても、少なくとも90点クラスは固いんじゃないかなという気がする(テキストがもの凄く上手いしシャレにならないほどボク好み)。
いやーもう日本語を書く自信がなくなったので(今ちゃんと日本語が表示されてるでしょうか?まったく自信ありません)ブログ更新していなかった自分が思わずブログ書いてしまう――書かずにいられなくなるくらい大傑作です。
んで。ボクは画面キャプやプレイメモを取るタイプの人間なのですが、全部プレイし終わった後に感想を書こうとなると、キャプとメモの量が膨大になりすぎて感想書く気がなくなるっぽいの明白なので――プレイ開始1時間で既に並のタイトルの半分くらいの量キャプってメモってる――個人的なメモとかそーいうのを。

なので以下ネタバレ(開始1時間くらい)。




いやー、いきなり「実在する何か」の引用ではじまるエロゲって良いですよね。直接的な関係が結ばれていない何かの引用というのは非常に難易度が高いです。感性・センス、知識・教養、そういったものがこれ以上なく試されて、そして何より、後に続く内容がその引用そのものに試されてしまう。簡単に言えば、引用した何かに比べて明らかに見劣る内容しか提示できなければ、単純に格好悪いわけです。引用したものは引用した分の力を借りるのだけど、その代わり、引用した分の責任を負う。だから最初に引用やって、それでいて上手く文章書ける人はすげーなといつもいつも思うわけです。
で、『はるまで、くるる。』の引用文ですが。まあ開始1時間の時点ではぶっちゃけセックスしかしてないので、その引用文がどうなのかとか全然分かりませんw
しかしまだセックスしかしてないのに、どう見ても傑作なんスよこれ。


春海「そういう考えはダメ。自習時間を決めることで、規律ある生活習慣を作るんだから。それには勉強大切。春を制するものは受験を制すだよ」
一季「それを言うなら春じゃなくて夏じゃなかったか?」
春海「別に夏だけじゃなくて、春だって制していいと思わない?」

ゲームはじめて2クリック目くらいの会話。この時点でもうボクの中でこのゲームは85点以上は固いと思いましたね! こういう何か気の利いた返しみたいなやり取りが大好きなのです。このゲームのテキストはマジレベル高いですね。天才とか呼べるレベル。
この作品の主人公の名前は「一季」です。で、4人いるヒロインがそれぞれ「春海、静夏、秋桜、冬音」。四季それぞれのヒロインと一個だけの季節の主人公とか、名前があまりにも出来すぎなのでこいつら実は人間じゃないとかこれは仮想世界だとかいうオチが待ってても不思議じゃないレベルですが、それはさておき。春海が、「夏だけじゃなくて、春だって制していいと思わない?」と述べるところが素晴らしいですね。「制する」をヒロイン攻略とか男女関係の隠喩とか、そういう風に捉えれば、「静夏だけじゃなくて私も制しちゃってもいいんじゃない?」と彼女は仰ってるわけです。じゃあ秋は冬は? となると、それはまた2クリック後くらいに別のヒロインが登場してこう話を続けるわけです。

冬音「全季節、全時間、時を選ばず制してやればいいんです。そうやって受験の野郎を絶え間なく、ひいひい言わせてやれば、受験なんで言わば私たちの奴隷。いわゆる肉受験ですよ」

秋も冬も全部制してしまえ、そして(元々受験勉強の話ですから)、受験を奴隷にしてしまえ。夏を制するものが受験を制するなら、春夏秋冬全部制したら受験を制するどころか奴隷化くらいできるんちゃうか? という戯れ的考えがここに働いている。―――ここでいう「受験」もまた

一季「で、受験を奴隷化するとどうなるんだ」
冬音「そうですね。……毎日受験できるとか?」
一季「それって地獄の一種だと思うぞ?」

ここでいう「受験」もまた、何かの隠喩のような気もしますが(特に本作はなんかループものとかソッチ方面らしいので、こういう台詞言われると余計に)、今のところセックスしかしてないのでよく分かりません。
とにかくもう、開始僅か数クリックでこんなやり取りされちゃって、なのでボクは速攻でこのゲームにめろめろの奴隷化、いわゆる肉プレイヤーになってしまったのです。



このゲームは春夏秋冬の4人のヒロインとたった一つの季節な主人公がゲーム開始時点で既にみんなと肉体関係を持っていて尚且つそれが周りに露見していて、そんななか静夏っていうヒロインが教室でいきなり「乱交をします」と宣言するところからはじまります。……なんかこれもう、意味わかんないんですけど、いやプレイすれば意味分かるんですけど、てゆうかもうそーいう意味分かるとか分かんないとか通り越して超魅力的っすよ!
で、よく分かりませんが(まだセックスしかしてないので)、主人公と彼女たちは異世界に飛ばされたのかあるいは他の人が異世界に飛ばされたのかもしくは夢の中とか精神世界とか仮想現実とかなのか、―――まあいずれにせよ、よく分かんないすけど、彼女たち以外は誰もいないという状況に何らかのきっかけや理由でなってしまって、……「春休みから1ヵ月半が過ぎた今」っていうテキストがあったから、多分春休みあたりから何スかね、そんなこんなで特異な状況に陥った彼女たちは苦しんだり悲しんだりした? それを助けるためというのも含めて一季はみんなと肉体関係を持った? ( あの時、俺はみんなの不安そうな横顔を見て。どうしても安心させてあげたくて……。勇気付けたくて……。 / 必死で手を握ってしまったのだ。 )  よく分かんないですけどテキスト読む限りそんな感じっぽいですね。
この一季という主人公も、自称「ちょっと他人と頭の作りが違う」と述べてるように、非常に(この先が)楽しみなキャラクターです。ここまでの感じ、敢えて「どのゲームに似てるか」と問えば、CROSS†CHANNELと恋愛0キロメートルを足して2で割ったんだけどその計算は凡人じゃなくて天才が行なったんですよ、だから単純に2で割ったという計算式が素直に成り立つとは思わない方が良い、という感じなのですが、それはテキストの色艶・感触・面白さ、ヒロインキャラクターの(なんとなくの)感じ、のみならず、主人公のキャラクターにも言えるでしょう。「熱いくらいでちょうどいい」の件とか、いい具合に壊れていて素晴らしく好みです。

こういう時、熱く考えないと、俺は異様に冷たい結論を下してしまうのだ。そのくらいのこと、自分でも理解している。
だから、心の中で叫んで、脳を焼く。
うおおおおおおおおっ!
熱いくらいで丁度いいのだ。
うわああぁぁぁぁぁっ!
熱く考えろ。熱く考えろッ!
ぐちぐち自分に都合のいいことばかり考えてるんじゃねーよ! こうなっちゃう前に! 静夏に言われる前に! 俺がどうにかするべきことだったんじゃねぇのか?!
疑問系で考えるな! ごまかすな!
俺がどうにかすべきことだったんだ! 絶対に! (以下略)

「熱く考えないと冷たい判断を下す」というから――ということを分かってるから、自分で自分をムリヤリ熱くしてムリヤリ熱く考えることによってムリヤリ冷たくない判断を導き出そうとしているのです。なんだこいつ。素晴らしいよ! 書いてませんが、この引用文の前のモノローグは、ちょうど「冷静に考えて冷たい結論を導きそうな」思考でした。冷静に状況や因果や責任などを考えて……考えながらも、文の末尾に思考のどもり(つまり…だから…そうじゃなく)を入れて、必死にそれに抗っているような姿勢。
そうつまり、(少なくともこの時においては)デフォルトじゃそっちなのです。冷静故に冷たい。しかしそういう結論を”出したくない”と思った、あるいは決意した。なぜそう至ったのかは分かりませんし、だからこそ彼がもてるのかもしれませんが、とにかく。冷静で冷たい結論だと確実に静夏を(さらには他の子を)傷つけることになるから、彼はムリヤリ、その時点での自分の思考とその流れに抗って、自分を熱くして熱く考えるようにしたのです。思考や考えに、感情や想いで抗っている。「感情を理性で抑える」という言葉をよく聞くように、どちらかというと普通はそっちなのですが、彼はその正逆を進んでいる。まあこれはこの時だけで、逆パターンを出てくるのかも……いや、このように、「自分をコントロールするために自分に抗う」姿を今この時点で出しているように、きっと出てくるのかと思われますが、しかしプレイ開始速攻でこんなに魅力を表してくれていて、肉プレイヤーのボクはさらにベタボレになっちゃいました。主人公は(詳しくは後に明かされるのだろうけど、とりあえず彼の言を全面的に信用するとして)大なり小なり「頭がおかしい」。しかし頭がおかしい人間でも、このように、自分で自分をコントロール(=自分で自分に抗う)ことは出来るわけです。



乱交をしよう。
さてまたしてもボクは瞬殺的勢いでこの天才的ゲームに魅了されてしまったわけです。「乱交をする」と静夏は言った。それは何故か。というと、彼女が語るとおり「嫉妬」から来るものです。

静夏「今の状況って本当の意味で、みんなの一季、じゃないわ。隠す、という意思が伝わるだけで、もうダメ。幾ら知っていても隠されてると思うだけで、嫉妬するわ」
静夏「つまり、もっともっと、もっと! 情報を共有しあうべきだわ」
冬音「あの~。共有するとどうなるんですか?」
静夏は冬音をキッと睨みつけて力強く言う。
静夏「……キャッキャうふふワールドに行けるわ!」
冬音「あ、あの……そこは具体的にどういう世界なんですか?」
静夏「嫉妬が今より少ない世界。私が冬音とキスする世界」
冬音「しっ、静夏さんとキスですか?」
静夏「一季とだけじゃなくて、女の子同士でもそういうコミュニケーションをするべきだわ」

(ちょっとだけ中略)

静夏「嫉妬なんか無視できちゃうほど、私たちは仲良くなるべきだわ。それには心も重要だけど、体だって大切だと思うわ。……このままだったら、私たちは大きなミスを犯すかもしれない」
一季「大きなミスってなんだよ」
静夏「例え話でも言いたくないわ」
冗談でも言いたくないこと。
つまり、それは……。
殺人。
ということなのだろうか?
……俺に限定すると、去勢、の可能性が高いのだろうけど。マジおっかない。
冗談でも言いたくないなんて言っておきながら、今朝、冬音を殺すって冗談を言ってたよなぁ。
静夏「だから、乱交を、するわ!」
一季「その結論はおかしいって! だいたい俺達の間で、変なことなんか起こるわけないだろうが!」
静夏「……」

なにこの長い引用疲れた。しょーじきこのゲーム全文章引用したいくらいですよ。読めばわかるだろ、みたいな。しっかり書いてあるのでしっかり読めば誰にでも分かるはずです。僕でも分かるのだから。そういう細かいところまで気が利くレベルの高さもまた素晴らしいのです。
で、要約すると、まず引用してない部分ですが、まるでベタなハーレムもののように、一季は「みんなのもの」ということでヒロイン4人の間での話は纏まりました。が、その「話の纏まり」では静夏さんの嫉妬は看過できないレベルにあったのです。「自分の知らない一季」というもの(たとえば他の子と会ってるときの一季)が存在する、ということ。それは既に「みんなの」ではない。そこに嫉妬してしまう。後に明かされますが、そういった嫉妬心は他の子も大なり小なり抱えていました。
そういった心を、乱交で解きほぐしていくのです。全ての共有。一季だけじゃなくて、彼女たち同士も。よくセックスを「一つになる」と称しますが、まさにそれが”彼女たちの間でも”行なわれているかのように、感情が、想いが、気持ちが、交換され共有されていくのです。これはもう圧巻ですね。マジ天才。みんなプレイしてやべーよこのゲームやべーよと震えるがいい。特に圧巻は「春海のエッチシーンでわざわざ画面に四分の一くらい使ってでかでかと(画面外にある)静夏の顔をカットインして入れている」ところです。ここで最も重要なのは女の子の裸でもインアウトインアウトする結合点でもおっぱいでもなく、”静夏がどんな表情をしているか”というところです。ということを(当たり前ではあるけど)作り手は一億も承知であって、だからこそこんな他ではお目にかかれない謎構図を実装している。これはマジ圧巻ですね。そもそもメインとなっているエロCGにおいては静夏の顔が映っていないのに右横にあるカットインにだけ静夏の顔が映っているというのも素晴らしいです。まるでそこから切り離されているかのようでいて、同時に深く結び付いている――春海とのセックスからは切り離されていながら、春海とのセックスと同時に・同じ価値で並び立つことが叶っているわけです。しかもカットインという存在しない謎のカメラ(物語世界外のカメラ)故に窃視的な、曖昧さと緊張感とある種の信頼できなさがそこに孕まれたままである。もう何スかこれ。天才と呼ばずになんと呼べばいいんですか! あーもうマジすっげー、素晴らしく細かいところまで手が届いて完璧に作られてるゲームだ(ここまでのところ、だけど)。みんなもやろーぜぃ。


そしてもう一つ。上の引用の下部分。殺人。「だいたい俺達の間で、変なことなんか起こるわけないだろうが」。―――いや恐らくこれは逆なんじゃないだろうか。”起こってしまいそうだからこそ”……あるいは”起こしてしまいそうだからこそ”、静夏は何とかそれを回避しようとして乱交を望んだのではないだろうか。「冗談でも言いたくないなんて言っておきながら、今朝、冬音を殺すって冗談を言ってたよなぁ」―――それは本当に冗談なんだろうか。もちろん本気ではないんだろうけど、たとえば、”口にもしたくないのに口にしてしまったから冗談ということにする”とか、そういう文字通りの「笑えない冗談」だったんじゃないだろうか。
どうにもね。考えれば当たり前かもしれませんが、乱交をすると言い出す、本当にする、その後の(されるがままの)覚悟、そういった行動は、殺人とはベクトルが異なるけど同じくらい行き過ぎている行動なのではないだろうか。つまり、それだけ彼女は(彼女たちは)追い詰められていたんじゃないだろうか。ここで乱交が叶わなければ、いつか嫉妬心に侵されて殺人を犯していた可能性はかなり高いのではないでしょうか。だから朝の「冬音を殺す」という冗談は、冗談でも何でもなく本音も本音、決して本気ではないけれど断じて本音―――つまり、典型的な、抑圧されているところからポロっと零れてしまうもの、そういったものではないでしょうか。嫉妬心が、抑圧され続けて、殺意が、育ち続けて、しかし、そこに目を向けることすら抑圧され続けてきたのだ。故に零れる本気ではない本音、そして導かれた突拍子もない解法、それが乱交。そしてそのとんでもない解法を完璧にこなしてしまったのです、このキャラクターと制作者は。
なのでもう、プレイ開始から約1時間、まだセックスしかしてないけどこのゲームは最高なのです。最高であると、この作り手は信頼できる人だと、そう確信できる。


ちなみに、静夏はなんかしらないけどバールを持ってたりバールを出したりバールネタが好きですけど、「なんで静夏がバールなのか」に、ここまで書いてきたことが繋がってくるのです(たぶん)。つまり作中で言っていたバールの役割、『いやバールは撲殺道具じゃねぇから。基本はくぎ抜きだから』。それがそのまんま(ここでの)静夏に当てはまる。バールといえば「バールのようなもの」で殴り殺すのが定番であるように、撲殺に使われる道具である。つまり殺人。バールが導く先の道としてそれがある。しかしそれが全てではないし、そもそも本来の使い方でもないわけです。基本はくぎ抜き。刺さってるいらないくぎを――必要なものも抜けますけど、基本的には不要な・いらない・無い方が良いくぎを、抜くことができるわけです。バールのもう一つの道として、そういった何か邪魔なもの・いらないもの・無い方が良いものを、排除することができる。
ということで、隠喩解釈学(≒妄想)によると、だから静夏にはバールなのかな、と思った次第であるのでした(まあまだ開始序盤なので、全然外れてるかもしんないですけど)。