2013年個人的に期待しているエロゲ25本

個人的に勝手に期待しているタイトル。購入検討みたいなものですね。こうやって書くからには多分だいたい全部買います。あとまだ発表されていないので載せていませんが、いつもチェックしているAXL新作、HOOK新作、KAI新作なんかも期待。

真剣で私に恋しなさい!A シリーズ

http://www.minatosoft.com/majikoi-a/outline.php
みなとそふと/1月18日から順次

1月から順次リリース予定の、「5本に分割されたまじこいのファンディスク」。現在のところダウンロード専売。ボリューム的には1本あたりフルプライスゲーの半分~3分の1くらいなのかなと予想されるので、5本に分割という言い方は正しくはないのですが。A1~A5まであり、それぞれ2人~3人の『まじこいS』ヒロイン&サブヒロイン(※百代やクリスなどの初代まじこいからのキャラは除く)のシナリオが収録されています。詳しくは公式サイトをチェック。
しかしこれどうしようか普通に迷ってます。最終的には5本全部をまとめたパッケージ版を発売するんじゃねーかなと公式に書かれていますが、どれだけ早くても来年にはなるでしょうし、DL版が1本3,980円ですから、単純計算だと約2万、多少割り引いたとしても1万代後半で発売されるんじゃないかと考えられます。ホントどうしよう。取りあえず現人神こと紋様ちゃんが登場するA-2だけは間違いなく買おうと思っているのですが、他をどうするかは悩み中。

大図書館の羊飼い

http://august-soft.com/daito/index.html
AUGUST/1月25日

現在、エロゲ界の玉座に最も近い位置にいるオーガストの新作。オーガストなので、「間違いなくつまらない作品にはならない」とだけは断言できます。てゆうか普通に面白くなると思いますが(もちろん、それ以上も)。『ユースティア』じゃなくて『FA』方面みたいな感じになりそうですが、個人的には『ユースティア』より『FA』『はにはに』『プリホリ』の方が好きなくらいなので密かに期待しています。

木漏れ日のノスタルジーカ

http://strega-soft.jp/products/nostalgico/#top
STREGA/1月25日

シナリオ:嵩夜あや×原画:のり太という、『おとボク』コンビの新作。2488年舞台のいわゆるSFゲーみたいです。女装ゲーではない模様。『おとボク』といえば丁寧なコミュニケーション描写が白眉で、特に『おとボク2』では余所では見たことがない凄いレベルのものを提示していたので(※共通ルートだけ。個別ルートになると何故か普通のエロゲーに成り果てる)、その辺なんかパワーアップしたのとかを期待したいっス。

ポケットに恋をつめて

http://www.aozora-biscuit.com/pokekoi/index.html
青空ビスケット/1月25日

公式サイト見てたら気になったので。どんなゲームなのかはよく分かってません。面白いことを期待したいです。

パステルチャイム3 バインドシーカー

http://www.alicesoft.com/pastelchime3/
アリスソフト/2月22日

OH、シミュレーションRPGになってる!(いま初めて公式見た) 『ぱすチャContinue』はすっげー面白いというわけではありませんがなかなかには面白かったダンジョン探索系RPGでして、ダラダラやる楽しみこそが強みだったのですが、8年ぶりの新作『3』はシミュレーションRPGになっちゃってますね。吉と出るか凶と出るかは実際に触ってみなければ分かりませんけど、とりあえずは楽しみにしています。

流星☆キセキ

http://www.softpal.co.jp/accent/project29/
UNiSONSHIFT Accent./2月22日

『愛しい対象の護り方』が、長谷川センセの欠点をプラスに変えるような内容、つまり明らかに「一皮剥けた」ような出来栄えだったため、長谷川藍氏には注目しています。いやまあその前に『恋剣乙女』が昨年末出てるので、そっち先にプレイしなきゃならないんですけど。

LOVESICK PUPPIES 僕らは恋するために生まれてきた

http://www.cosmiccute.com/products/lovesickpuppies/index.html
COSMIC CUTE/2月28日

実は2013年一番期待しているタイトル。『W.L.O.』の安堂こたつ先生、およそ4年ぶりの新作っすよ! ボクはもうこの人エロゲの仕事が無くなっちゃったのかと(勝手に)思ってずっと悲観してたんですけど、やっと来ましたようやく来ました遂に来てくれました!!
『W.L.O.』は”長い”ということで一部で有名だったりしますけど、しかしプレイしているこちらとしては長さを殆ど感じさせないくらい楽しく密度が濃いモノが描かれていまして、その筆圧がまた現前してくれるとなれば、これはもう期待に五百乗で全裸待機くらいしか俺に出来ることはねーなと。キャラクター描写も、このタイプのゲームでこれだけの数のキャラクターをここまで魅力的に書き分ける―――つまり”圧倒的”なので、その辺も期待ってゆうかもう早くプレイしたいくらい。楽しみ!

運命が君の親を選ぶ 君の友人は君が選ぶ

http://white-soft.jp/products/unmei/top.html
WHITESOFT/2月28日

友人を選ぶとかどんなコミュ強者だよこちとら旧ソ連のスーパーマーケット食品陳列棚並に友人候補がスカスカで選びようがねえぞとお怒りのみなさん(というか俺)、よく見てください、シナリオライターは『猫撫』の人。ならば面白いつまらない置いといて取りあえず手を出してみるでしょ、といった感じです。

レミニセンス

http://www.tigresoft.com/reminiscence/index.html
てぃ~ぐる/3月22日

暁の護衛』スタッフの新作。『護衛』はなんかエロゲとしては珍しいハリウッド映画みたいなアトモスフィアを纏う一品でそこそこ面白かったりしたので、これも面白いのではないかなと。また『護衛』のときみたいに「実は続編前提です」みたいなオチだけはやめて欲しいですけど。

グリザイアの楽園

http://frontwing.jp/product/grisaia3/index.html
フロントウイング/3月29日

『迷宮』どころか『果実』すら未プレイ、積んでいます。発売までには、『楽園』発売までにはやりますので……!

向日葵の教会と長い夏休み

http://www.makura-soft.com/himanatsu/index.html
枕/3月29日

『すばひび』みたいなのかなーと思ったらライターがJ・さいろーだと……! さいろー先生にハズレが存在するわけがないので買います。エロスケ見てたら「夏が舞台でサンタとか関係ない『しろくまベルスターズ♪』みたいなの」と書かれていたのでより期待が膨らみます。『しろくま』と同等でも相当の傑作。あわよくばそれ以上になってくれれば、言うことなしです。

僕らの頭上に星空は廻る

http://polarstar-web.jp/bokusora/
POLARSTAR/3月29日

ぶっちゃけどんなゲームなのか全く知らないんですけど、公式のジャンル名が「青春すぎて死にたくなる学園ADV」なので購入決定。本当だな? 本当に死にたくなるんだな? 嘘じゃないな? 俺は楽しみにしてるぞ、俺が死にたくなることを! さあ俺を殺してみろー!!

ギャングスタ・リパブリカ

http://white-soft.jp/products/gangsta-republica/index.html
WHITESOFT/4月26日

シナリオライター:元長柾木なので。

ChuSinGura46+1 忠臣蔵46+1

http://inre-soft.com/index2.html
inre/春

同人で高評価を集めた、ざっくばらんに言ってしまえば「忠臣蔵女体化モノ」。てゆうかこれって同人時代の作品を(調節して)全部入ってプラス完結編という内容なのか、それとも同人時代の作品は別に同人作品買ってねという内容なのか? 公式サイトをさらっと見た感じじゃちょっと分からなかったです(くまなく見れば書いてあるかもしれませんが)。まあいずれにせよ買うんですけどね! 面白そうだし。

運命予報をお知らせします

http://yonaki.rdy.jp/top.html
ヨナキウグイス/春

これもまた同人で高評価を得たシナリオライターさんの商業デビュー作。という意味だけでも注目なのですが、とりあえず公式サイトを見てやられてしまいました。「なんか公式サイトが凝っててセンスある作品にハズレはない、さらにゲームタイトルロゴデザインなんかも素敵だと激アツ」という法則が自分の中にあるのですが、この作品は見事に当てはまっています。まあ実際のところどうなるかは分かりませんけど、しかしかなり良い作品になる可能性も存分にあるんじゃないかなとか思っています。

お嬢様はご機嫌ナナメ

http://www.ensemble-game.com/06.ojyonana/top.html
ensemble/春

ボクが唯一原画家買いする武藤此史氏に、それぞれ好きなシナリオライターTOP10に入る保住圭先生と籐太先生、さらにメーカー買い……とまではいかないけどそれに近い感じになっているensemble、という、もう個人的には至高の組み合わせです。
『ましろ色シンフォニー』『キッキングホース☆ラプソディ』のように、萌えと恋愛を書かせたら右に出るものがいない保住圭。『ひのまるっ』『桜花センゴク』のように、ドタバタコメディ的な笑いと特徴的で魅力的なキャラクターを描くことに関しては極めてるといえる籐太先生。この二人が組むんだから、これがつまらなくなるはずがない! ……と言いたいんですけど、この二人が組んで作った『なでしこドリップ』はぶっちゃけつまんなかったんですよね。萌えと恋愛、笑いとキャラクターというお互いの強みが何故か死にまくっていた。
とはいえそれは過去の話。今回こそは上手いこと、傑作になってくれることを祈っています。字面から見るポテンシャルだけなら絶対傑作になるはず……!

双子座のパラドクス

http://cotton-soft.com/
コットンソフト/春

評判にもなった前作『終わる世界とバースデイ』でも相変わらず力のあるところを見せてくれた海富一先生。もちろん次回作も期待しております。

ひとつ飛ばし恋愛

http://asa-pro.com/hitotsutobashi/
Asa Project/春

『恋愛0キロメートル』『アッチむいて恋』などでお馴染みのAsa Projectの新作。ギャグも物語も超一級品のシナリオライター1人と、別にそうでもないシナリオライター数人が組み合わさって何故か一つの作品を作り上げるというのがアサプロの定番なのですが、今回もそうなんでしょうかー。いやもう『めいくる』も『Himeのち』も全部やったのでぶっちゃけますが、これなんなんだろうって本当正直いつも思います。失礼も何もかも承知で言っちゃいますけど、メインライターの人担当パートだけでも十分元は取れるし楽しいです。しかし、しかし今回こそ、そのさらにもう一段上を見せてほしい……!

フレラバ

http://www.hook-net.jp/smee/friendlover/index.html
SMEE/春

『ラブラブル』『らぶでれ~しょん』などでお馴染みのSMEEの新作。いつも複数ライターなのに、どこを誰が書いているのか分からないくらいブレが無いのがSMEEの特徴とも言えるでしょう。しかも笑えて面白く萌えるいちゃラブ……いや、いちゃラブに殺されるという高品質を実現していながらブレが無いのが恐ろしい。絶対に買いですね。

なつくもゆるる

http://www.sumikko-soft.com/natsukuru/
すみっこソフト/夏

「なあ、どうして今すぐ死なないんだ?」「そりゃすみっこの新作をまだプレイしてないからだよ」―――多分今年の年末に「2013年ベストエロゲNO.1は『なつくもゆるる』でした」と書くことになるでしょう。俺がまだ死なない理由。まあ、期待していると同時に、下手に『はるくる』を引きずってはいないかと誠に勝手ながら少し不安(てゆうか諦観)でもあるんですが。


夢か現かマトリョーシカ

http://effordomsoft.com/matryoshka/
エフォルダムソフトcrown/2013年

しょーじきこの駄洒落みたいなタイトルには嫌な予感しか沸いてこないんですけど、しかし個人的にエフォルダムソフトの『恋騎士』は結構好きだったのでチェック。原画以外のスタッフが現在未公開状態なので、『恋騎士』とは全然違う陣容になってしまうかもしれないですけどね。

ラブらブライド

http://www.chuable.net/lbr/
ChuableSoft/未定

今までチュアブルのゲームはだいたい手を出してきた自分でも、しょーじきタイトル見た瞬間に「今回はご縁がなかったということで……」とお祈りしそうになったのですが、原画が武藤此史先生ということで。ならば手を出さざるを得ないかなーと。今年出るかどうかはまだ未定ですが、出るようなら要チェック。

太陽の子

http://www.collaborations2005.com/taiyo/index.html
CollaborationS/未定

公式サイトが半年以上更新されていませんがそんなこともう誰も気にしなくなった今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。僕はと言えば、「太陽の子=Son of Sun=SOS=救難信号、つまりこれはもう作れねーよと嘆くタカヒロるーす丸戸の嘆きを表していたんだよ!な、なんだってー! ……はぁ…………」などと一人詮無いこと考えてのんびりと暮らしております。いやなんかもうどうでもいいというか、発売さえしてくれるならもうどうでもいいや、という気分になってきました。頼むから開発中止だけは止めてください~、と。そんな気分。
まさかここまで来るとは思っていませんでした。then-dさんのとこに「世界一早い太陽の子論」を書いたときには、夏くらいには出るだろうと思っていましたしね。しかし待った。ここまで待った。いやこれからも待たされるっぽいですけど。2010年の年初に「今年は出るようなら『太陽の子』に期待!」とか書いていた(http://nasutoko.blog83.fc2.com/blog-entry-64.html)のですが、あれから3年、今年もまた同じことを書かなければならないようです。「今年は出るようなら『太陽の子』に期待!」

個人的2012年ベストエロゲ10選

毎年恒例っぽい年間ベストです。ちなみに去年の→ http://d.hatena.ne.jp/tempel/20111228/1325001707

今年はレベル高かったですね! 特に80点前後の良作が目白押しで、惜しくも選外ですが『英雄*戦姫』『ものべの』『同棲ラブラブル』『古色迷宮輪舞曲』『辻堂さんの純愛ロード』あたりも良作でした。ギャグ・笑いだと『追奏のオーグメント』『あえて無視するキミとの未来』なども素晴らしかったです。前者はまるで完成度の高いコントのようなギャグを繰り広げて、後者はなんとネタフリもツッコミもないけど言葉のセンスだけで笑わすという凄いポテンシャルを見せていました(もちろんネタフリもツッコミもあるシーンはある)。抜きゲーだと『MonsterSurvive』に一番お世話になりました。新堂エル原画でどのようなエロゲーになるのかワクワクしてたら、新堂エルのエロ漫画そのままだったという。システムが相当残念なことになっているのが欠点。あとエロゲじゃないので入れていませんが、『魔法使いの夜』も勿論ウルトラ素晴らしかったです。もし入れるなら3位くらいという感じ。
ということで、以下ネタバレは多分ないです(ほのめかしみたいなのならあるけど)。


10.この大空に、翼をひろげてPULLTOP

今年一番の問題作。「青春」とか「さわやか」とかよく言われていますが、あれは正しいっちゃ正しいのですが半分嘘でもあります。もっとおどろおどろしい。人間は色んなものに縛られていますね。たとえば重力というものがある。だから、生身の身体だけで空を飛ぶことは出来ない。たとえば事故で足が動かなくなってしまえば、地を駆けることは出来なくなる。極端な話、メシを喰わなきゃ死ぬというのも、呼吸をしなければ死ぬというのも、人間に科せられた縛り、呪いであるわけです。そうしたくなくても、そうすることしか出来ない/そうしなければ進めない。そういった縛り、制限、決まり。それらが人間に枷られている。それこそ、ドラクエの装備してしまったら外せないという「呪い」みたいなもので。なんか俺らがどうこうする以前に/あるいは、どうこう出来ないような領域で、既に決められていることがある。それが僕らを縛っている。僕らはみんな呪われている。さてそういった縛りの中で、(おそらく)全ての人にとって最も重く、逃れられない呪いというのは、「自分が自分であること」ではないでしょうか。これは簡単には逃れられないし、たとえば重力があることは「そういうものだ」と割り切って納得したり諦めたり出来るけど、自分がこういう性格だとかこういう人間だということを「そういうものだ」と割り切って納得したり諦めたりするのは難しい。人は成長したりもするけれど、それだって今の自分の延長線上でしかない。…………で、この作品は、つまりそういうことです。「自分が自分である」という呪いがあまりにも付き纏いすぎていている。まるで丸戸が今までやってきたことの、もう一段上を披露しているかのようだ。重力があるから空を飛べない、なんて制限は、たとえば飛行機用意すれば覆せる。足が動かないから駆けれないけれど、たとえば飛行機を操縦すれば空を翔けることが出来る。しかし、「自分自身」は。たとえばこの大空に翼をひろげたところで、自分自身から逃れることは誰にも出来ないんじゃないだろうか。―――後期丸戸*1にも言えるのですが、人間はもっと簡単に自分自身を(良くも悪くも)裏切るものだと思っているので、このような「人間を突き詰めすぎて逆に人間じゃなくなっている」みたいなキャラクタは何だかおどろおどろしくてヤベえです。基本的には高品質だし、さわやか青春ギャルゲーみたいなノリでもあるのですが(プレイしてて全盛期のKIDを思い出してしまった)、実は中身は苛烈なくらい人間の人間たる由縁を表現していて――あんまりにも苛烈なので逆にこんなの人間じゃねえって感じなのですが――本当のところ、青春だのさわやかだのより其処が魅力的でした。


9.キミへ贈る、ソラの花(Cabbit)

いつからエロゲーは美少女エンターテイメントに成り果てた? かつて主人公は、トラウマを抱えたヒロインの心の傷を癒し、問題を抱えたヒロインの苦悩を解決し、彼が彼女の万能のスーパーヒーローとなることにより幸せをもたらした。そんな葉鍵全盛時代の戦場を現代に蘇らせたのが、昨年発売された『翠の海』であり、そして今年発売された『キミへ贈る、ソラの花』である。女の子のトラウマ解消”しか”物語がないと言っても過言ではないような、いまどき珍しいオールドタイプのストロングスタイル。報われること、救われること―――つまりシンプルに「幸せ」のみを追求するその姿は、かつて私達が、なぜ、ヒロインのトラウマ解消なんて物語に快楽を見出していたかの答えを教えてくれる。


8.乙女が紡ぐ恋のキャンバス(emsenble)

色々ナイジョーバクロ事件とかがありましたけど、ゲームそのものは良いです。むしろ、「シリアス入れようとしたら萌えゲーにそんなのいらねえよって止められた」みたいな暴露をされていましたが、これシリアスなくて(薄くて)逆に良かったんじゃないかなーと思う。せっかくのキャラクターを生活感にまみれさせちゃってるんですよね。それとも、シリアスが中途半端だったからそうなってしまったのか。キャラクターを人間に堕としてしまったと嘆くべきか、キャラクターを人間の領域まで引き上げたと喜ぶべきか、難しいところでもあります。
中身そのものは正統派とも言えそうな女装主人公ゲームで、どことなく「もし『ハヤテのごとく』の綾崎ハヤテが最初からずっと綾崎ハーマイオニーとして生活してたらどうなるか」みたいな感触があります。万能に近いけどちょっと弱いところがある男の娘主人公がイチャイチャラブコメするゲームをお求めの方は是非。


7.紅蓮華(エスクード

『黄昏のシンセミア』『コンチェルトノート』でお馴染みの桐月先生の新作。感じとしてはそれらの作品と似ています。面白いんだけど、どこがどう面白いのか上手く説明できない。前二作もそうですが、物語うんぬんよりもただキャラクターがお喋りしているだけで楽しい。なのでキャラクターみんな好きになれる。基本ロリ貧乳以外は興味すら持てない自分ですら、このゲームのキャラクターはみんな好きです。ただそれだけに、好きになったキャラクター同士が敵対しあって殺しあってしまう物語が『シンセミア』や『コンチェルトノート』と比べてちょっとどうかなと(しかも戦闘シーンがぶっちゃけかなりショボイですし)。桐月作品好きな方は、間違いなく楽しめるんじゃないかと思います。


6.月に寄りそう乙女の作法(Navel

この世で唯一、お優しいルナ様と仮想ゆりんゆりんが出来るゲーム。もうそれだけで永久保存版レベルです! 女装主人公ゲーって仮想百合(相手が女装主人公のことを女の子だと思いながらも好きになってイチャイチャする行為)が生じそうでなかなか生じないのですが、それがここでは実現されていて、そしてなんと実現してみると、想像以上に魅力的だった。マジ楽しい。ルナ様と朝日の百合を数十時間繰り広げるだけのファンディスクとか作ってくれないスか。
シナリオも素晴らしくて、なにげに『俺たちに翼はない』の結論を、敷衍して拡張して応用して実行しちゃったりもしています(当時書いた感想:http://d.hatena.ne.jp/tempel/20121116/1352997671)。女装主人公好きの方にとっては臓器を質に入れてでもマストバイレベルですが、俺つば好きの人にとっても実に手を出すべき作品ではないでしょうか。


5.平グモちゃん ―戦国下克上物語―(LiarSoft)

喩えるなら、本邦初の「テキストベースオープンワールドエロゲ」。実在の戦国武将、松永久秀を主人公にして、史実をなぞって爆死するもよし、天下統一するもよし、謀反せずに信長の腹心になっちゃうのもよし、足利幕府再建の立役者になっちゃうのもよし、三好を支え続けるのもよし、切支丹になっちゃうもよし、一商人で終わるもよし、疲れ果て廃人みたいになっちゃうもよし、エトセトラ……と、非常に数多くの道が用意されています(ここに挙げたのはほんの一例です)。東大寺を焼いたって焼かなくたっていいし、将軍を殺したって殺さなくたっていいし、平蜘蛛で爆発しても爆発しなくてもいい。史実・諸説・逸話、あるいは妄想などを重ね合わせて出来上がった、非常に自由度の高いエロゲーです。またこのゲームが優れているのは、殆ど全てのルートが、基本的に等価なものとして扱われているところ。一部BAD ENDなどを除けば、ほとんど全てのエンディング/ルートに優劣の差がない。言うなれば全てが正史で(正史と同価値に扱われていて)、これはただのifルートだからとか、これはただの偽史だからといった扱いはされていない。この辺はED(EDソング)が本編への素晴らしい批評となっていますね。天下人になろうが、一般人のまま終わろうが、ゴミクズのように果てようが、その道を命の限り精一杯に走ってきたのだ、だからどれも肯定される。
松永久秀、または戦国時代・日本史好きにはたまりませんが、「松永久秀? 誰だっけそれ」みたいな方でも十分楽しめます。てゆうかボクがそんな感じでしたし。ただ欠点として、プレイした人の大多数が言ってしまっているのですが、システムが非常にアレですw。攻略サイト見ないと難易度Sクラスに跳ね上がる(攻略サイト見ても難易度トリプルAくらいあるんだけど)この歌舞伎すぎたシステム。シミュレーションゲームみたいに、軍事や内政などの値があって、評定パートにおいてその数値を上下させることが出来るのですが、これが……。これ多分、ADVの硬直性にSLGの弾力性を足そうとしたのだろうけど、それが超絶裏目に出ているんじゃないでしょうか。ノベルゲームというのは過程と結果がダイレクトに結びつきます。たとえば、選択肢Aを選んだらルートAに、選択肢Bを選んだらルートBに、といった感じに、途中過程と最終結果が直接的に結びついている。逆にシミュレーションゲームというのは、過程と結果にもう少し柔軟性があります。たとえば(プレイヤースキルが必要ですけど)内政ゼロでも天下統一は出来るし、特定キャラしか育てていなくてもエンディングまで辿り着ける。「過程」と「結果」の関係でいうと、ノベルゲームは硬直的で、SLGは柔軟的なわけです。で、『平グモちゃん』はその二つの「悪いところ」を融合してしまったので、どこの感想見ても「システム極悪」と非難轟々な事態になってしまっていますw 具体的には、「このシーンで内政3以下だとルートA、6以下だとルートB、それ以上だとルートC」みたいな感じで分岐判定されて、しかもそれが毎回ノーヒント。その上普通の選択肢もあるし、誰々が生きてるか死んでるかのフラグ判定もある。ぶっちゃけプレイヤーにとってはサイコロ振って出た目によってルートが決まるってのと同レベルなので、攻略サイト見ないと全クリはめちゃくちゃ困難です。てゆうか心が折れます。全クリ目指さないで、普通にプレイするだけでも心が折れます。この辺をどうにかしてくれたらもっと良かったんだけどなー、と思わずにはいられません。


4.屋上の百合霊さん(LiarSoft)

言うことないくらい最高。基本的に軸は二つあって、まずタイトルにもなっている「百合」ですが、この作品に百合は厳密に言うと無いも同然です。自分達を百合と自称する人も、他人を百合を規定する人もほぼ全くいないし、そもそも百合という言葉自体がタイトルにもなっている百合霊さん以外ほとんど口にしない(その百合霊さんも、彼女が生きていた当時にはなかった百合という言葉を教えてもらったという体なので、今現在一般に流通している「百合」と彼女が使っている「百合」という言葉は、正確に同じ意味を指しているとは言いがたい状態です)。じゃあ同性愛なのか、あるいは単に同性同士の恋愛なのか―――いや、そういう以前の話なのです。百合だの同性愛だの恋愛だのそういう以前の場所、つまり関係性以前の場所、そもそも「好き」とはいったいどういうことなのか。それを取り上げています。特に明確なのは、女の子に告白されて、その子のことを好きではあるんだけど、それが「友達としてなのか、妹・家族のようになのか、それとも恋人としてなのか、どういう好きなのか分からない」という場面。これ、男女だったらもうちょい簡単に「恋人として」の好きに導かれてもおかしくないでしょう。私は女で、相手は男で、そして向こうが自分のことを好きと言ってくれて、私も向こうのことが好きで、ならばこれは恋人としての好きではないだろうか(あるいは、取りあえず付き合ってみれば、恋人としての好きに変化するのではないだろうか)。そういったことが、ここでは無いのです。女同士だから。「常識的に考えて恋人としての好き」なんて規範的な心情の規定はあり得ないし、「取りあえず付き合ってみよう、恋人として好きになれるかもしれないし」なんて気軽に踏み込むわけにもいかない。だから、その分だけ、真剣に考え抜いて、悩んで、苦しんで、それでも「これしかない」と見つけた「好き」しか、ここにはない。社会的なもの・常識や外側からの規定、そういったことが導いてくれたり手を貸してくれたりすることはない。だから、ここにあるのは、恋人とか同性愛とか百合とかいう外側からラベリングされたものではなく、それ以前の純粋な「好き」という感情なのです。だからね、プレイしててすげードキドキします。なにこのトキメキ、すごい!

あともう一つ、百合霊さんが主人公に「憑依」してなんたらかんたらしたりするのですが、これはまんまプレイヤーにも敷衍できて、つまりプレイヤーが主人公(ならび他の女の子)に「憑依する」ようなゲームでもあるわけです。つまりプレイヤーが女の子になれるゲームでもあるわけです。これがまた素晴らしい。ちょっと触れば分かると思いますが、音楽もテキストも絵も各種インターフェイスのデザインも、すごく女の子ナイズされていて、そういったところが「女の子になるゲーム」としての完成度を高めています。他のエロゲじゃまず出会わないやけに女の子チックなサウンドトラックとか、みんな学校の制服なのにセーターや小物などをそれぞれ(そのキャラに合った感じで)コーディネートしているところとか、もう驚愕の作りこみです。百合トピアというのは、百合のための楽園じゃない、単に我われが別人となって別世界へと没入できる、そういう仕組み=このゲームのことなのだ。


3.真剣で私に恋しなさい!S(みなとそふと

どこからどう見てもタカヒロ丸出し。続編と言うと、よく、「前作の長所を伸ばす」「前作の短所を無くす」の二つの方向性が示唆されると思いますが、このゲームは前作『真剣で私に恋しなさい!』の長所を伸ばしまくって、さらに短所も伸ばしまくっています。そう、前作の良いところは更に良くなっていますが、悪いところは更に悪くなっている(笑)。しかし前作大好きだった自分なんかにはそれでサイコーなのです(前作合わなかった人は今作の方がより合わないかも)。神が創りたもうた奇跡の美少女、紋様ちゃんもいますしね。 感想(http://d.hatena.ne.jp/tempel/20120207/1328621878


2.はつゆきさくら(SAGA PLANET)

ボクなんかは、エロゲプレイしてるとたまに死にたくなることがあって……むしろだからこそエロゲをプレイしてるんじゃないかと思うのですが、このゲームは今までで断トツ一番で死にたくなりました。何度PC投げ捨てようと思ったか分からんし、何時間もシネシネ連呼しながらクリックしてたし(もはやキチガイ)。そんなゲームでした。ここには既に終わってしまった話しかない。既に終わってしまっていることを、本当にきちんとちゃんと終わらせるための事以外なんにもない。麻枝准のエッセンスだけを薄めずにそのままぶち込んだ(ので、最早だーまえとは別物になっている)ような作品。『AIR』のAIR編だけを30時間ぶっ続けるような、そんなイカれた作品。プレイヤーである俺という存在がぶち殺されるような、そんな作品。最高でした。


1.はるまで、くるる。(すみっこソフト

公式:http://www.sumikko-soft.com/harukuru/

本年度ナンバーワンどころか、今までプレイした全てのエロゲの中でも2番目くらいに好きで高評価しています。センス溢れるテキスト、笑いに満ちたギャグ、先が読めない展開、深く練りこまれたSF、最高にファッキンなキャラクターたち、そして素晴らしすぎるテーマ。個人的には『CROSS†CHANNEL』に対するある種の続編というか、解答みたいな感じに読んでいます。黒須太一もここに放り込めば、フリじゃなくマジで普通の人間になれたかもしんないですね。
他の人の感想を読んだりして思ったのですが、このゲームの肝は体験版部分(序盤)にあるのではないかと思います。「なんだエロシーンだらけか」で終わらせてしまったら、多分このゲームに乗り切れない。抜きゲーかと思うくらいセックスしまくる序盤なのですが、そこでテーマ的に重要なところがガンガン展開されていくのです。男女のお話なのにセックスで(快楽とかの)体の問題ばっかに言及してて、セックスを使って心の問題に踏み込まなかった今までのエロゲーの方がおかしいのだと言わんばかりに、セックスでお話上重要なことが表現されるし、むしろセックスがなかったら表現できなかった。セックスというのは、ただの欲望の発散でもなければ、ただの生殖行為でもなく、心を確かめ合うとか愛を確かめ合うとかそういったものに収まりきらず、コミュニケーションではまだ足りず、何かの儀式や通過儀礼と言うだけでは説明不足で、遊びや楽しみのの一言で纏めるのは乱暴だ。つまりセックスというのはそれら全部なんです。―――ということを完膚なきまで謳い上げている。つまりこの作品のエロシーンは完璧なセックスである。詳しくは体験版をプレイしてください、もしくは体験版部分(製品版の序盤)だけは感想書いたのでそれを読んでください(http://tempel.hatenablog.com/entry/2012/06/17/023907 / http://tempel.hatenablog.com/entry/2012/06/22/010159
とにかく最高のゲームでした。にも関わらず2900本しか売れてない(!)という超悲しい事実があるので、みんな買うべきです。体験版やって良さげだったら買いましょう。プレイしましょう。そして今まで生きてきて良かった、このゲームがプレイできたのだから、という気持ちを味わいましょう。

*1:パルフェ』の理伽子シナリオ(お姉ちゃんシナリオもちょっと)、『こんにゃく』の海己シナリオ、『NG恋』以降の全部

物語やシステムや設定と「エロ」が密接に絡み合ったエロゲは最高だ、という話。

先日……てゆうか結構前ですが、euphoriaというエロゲをやりました。これの「エロ」がですね、かなり良かった(正直言うとそれ以上に「惜しかった」のですけど)。

euphoria

euphoria

文字だけだと寂しいのでアマゾンリンク載せときますが、アフィとかは登録してないので買うと多分はてなに金が入るんだと思います。やったねはてなちゃん、お金が増えるよ!(それ以前に売れない)


ご存知の方もいらっしゃると思いますが、『euphoria』は後半の展開が神がかってると話題になったゲームでして、つまりネタバレしたらダメな作品なので、後半部分や核心部分のネタバレはしませんが、話の都合上序盤のネタバレは含みます。公式のあらすじ+α程度ですけど。さて、『euphoria』は、その公式のあらすじを見た方が早いですが(http://entacom.org/clockup/product/euphoria/story.html)、要約すると、目が覚めたら女の子数人と一緒に主人公が謎の建物に閉じ込めらているところから始まります。そんな中、部屋にあるスピーカーから「謎の声」が「これからゲームを開始します」と告げてくる。Hな命令(背徳的で暴力的で凌辱的な)が送られてくるので、主人公は女の子を一人選び、それを実行しなければならない。逆らえば死、上手くその命令を達成できなくても死。実際、ゲーム開始早々に速攻で、逆らった一人が死にます。上手く命令を遂行できれば建物の扉を一枚ずつ開いてあげよう。そのうち脱出できるかもね。―――そんなゲームです。この設定が素晴らしい。そしてエロい。
お分かりかもしれませんが、これってエロゲの縮図そのものでもあるわけです。稀に例外もありますが、ほとんどのエロゲにおいて、主人公とヒロインは絶対にセックスをします。言い換えれば、強制的にセックスをさせられるのです。現実の人間だったら、付き合ったからといって必ずセックスするわけではない。童貞のまま処女のまま人生を終える者もいる。しかしエロゲにおいては、主人公とヒロインが付き合ったらほとんど必ずと言っていいほどセックスするし、主人公・ヒロインといったメインの人物はほとんど必ずゲーム内のどこかにおいて童貞・処女を喪失することになる(既に失っていた場合は普通にセックスすることになる)。何事にも例外はありますが、基本的には、どんなに描写が薄かろうとも、エロのないエロゲというのはあり得ないし、セックスをしないエロゲというのもまずあり得ないわけです。故にこれはつまり、エロゲのメイン登場人物となった以上、彼ら彼女らは、その想いや性欲どうこう以前に「エロゲというジャンルの要請によって」必ずセックスをすることになる*1
euphoria』の設定は、そういったエロゲというジャンル構造そのままでもあるわけです。強制的にセックスさせられるというジャンル要件を暴力的な形で顕現した。ちなみに、命令されてHなことをしている時に、作中で主人公は「この様子を何処かで見て愉しんでる奴らがいるんじゃないか」と推測します。誰もいない建物の中に閉じ込められ、Hな命令を強制されるというものですから、そのように考えるのは当然であるでしょう。そしてそれは正解である。まさにプレイヤーが、それを見ている。
さて、ここで『euphoria』が上手いのは、公式のあらすじにも書いてありますが、主人公が密かに愉しんでしまっているという点です。下される命令というのは、無理矢理犯したり無理矢理イラマったり水に沈めてなんちゃらとか首を絞めながらどうたらとかアスホールあれこれしたりとか、要するに大半が凌辱的暴力的残酷的なのですが、主人公はそういった、女の子をめちゃくちゃにするということに密かに愉しみを覚えてしまっています。内心そう思ってる、密かに、というのがポイントで、口では女の子をいたわるようなことを言っておきながら、心の中ではこの陵辱劇に暗い喜びを感じているのです。強制されているだけなんだ、命令されているだけなんだ、仕方ないんだという外面をしておきながら、心の中では愉しんでいる。ここにプレイヤーがリンクする。私たちも、ゲームを進める為には、たとえ嫌でも女の子に酷いことしないといけない。そうしないと物語が進まないんだから。私たちも事実上強制されているのです。しかし同時に、その強制されたセックスを、楽しんではいないだろうか、愉しみではないだろうか、エロシーンでズボン下ろしちゃったりしていないだろうか。
これが素晴らしいくエロいのです。主人公はやらなきゃ脱出できない、プレイヤーはやらなきゃゲームが進まない、だから渋々、非道な行いも為しちゃいます。とか言いつつ、実際はその非道な行いで生じるエロは充分味わってるし、あまつさえ愉しんですらいる。この、罪悪感や責任感が棚上げされた結果、上辺だけの正当性を得られる、その設定が、抜群にエロさをパワーアップさせている。たとえばですね、現実で考えてみてください。誰かに命令されて仕方なく犯しているんだ、ああでも気持ちいい―――そんな場面は、ただ普通に犯すよりさらに遥かにエロさを感じないだろうか。いやまあ実際にそんな場面に出くわすことになったらそれどころじゃないかもしれませんけど、妄想として。実際には色々と痛みがあるだろうけど、そういうの抜きにして。てゆうか『euphoria』自体、そういう「現実だったらあり得る(心の)痛み」を、それこそ安全に痛いレベルになるまで濾過しています。つーかクソ上手いですよこれ。天才じゃねと思いました。たとえば、『euphoria』のこの設定というのは、真の意味での罪悪感や責任感を、手が届かない領域に遠ざけます。どれだけ酷いことしようが、どれだけ犯そうが、そういうゲーム(他に選択肢はない)なのだから、主人公は/我われは悪くない、という構図が出来上がってしまう。命令されてるから(他に選択肢がないから)仕方ないから悪くない、という意味ではなく、命令されてる(他に選択肢がない)という前提条件がある以上、どう頑張っても1から100まで全て「悪い」ということにはなれないのです。つまり、主人公は/我われは、たとえ罪悪感を持ちたくても、罪悪感を真の意味で抱くことが出来ない構造になっている。責任感もまた然り。常に逃げ道が確保されていて、せいぜいが、真の痛みを取り除いて愉しめるレベルまで落とし込まれた痛みになっている。それがいいのです、エロ的に。罪悪感というのはエロを増幅させるスパイスである、というのは例えばNTRモノの作品読んだことある方は十全ご理解頂けるでしょう。勿論大きすぎる罪悪感ではそうならないかもしれませんが、しかしどうだろう、『euphoria』のように、愉しめるレベルまで濾過された罪悪感であれば。目の前のエロ行為に「さらなるエロい意味」を付け足してくれるのではないだろうか。例えばNTRモノで女の子が、”彼氏を裏切ってるからこそ普段より余計に感じている”描写があったりするように。


ということで、単純に裸でいちゃいちゃしたり愛撫したり挿入したりすればエロいというわけではなく、もっと他の部分によりエロさというのは構築されていると思うのです。たとえば昔精神分析ジャック・ラカンとその周辺の人たちの本をよく読んでいたのですが、あの辺の人たちがセックスにおいて最も重要なものと見做していたのは「幻想」です。幻想というのは、あるものをそのもの以上の何かにするヴェールのこと。てゆうかそんな風に言わなくても、みなさんだってご存知でしょう。どうしてただ挿入するだけで満足せず、衣装にこだわったりシチュエーションにこだわったり立場や年齢にこだわったりするのか。たとえばもし、同じ顔同じ声同じ性格同じ体形同じ身体つき、つまり全てが同じである40歳とじゅうなんとか歳(好きな数字を入れよう!)がいるとして、その両者とセックスしたときに、得られる快感は両者ともに同じであるだろうか?
そういった、エロさを増幅できるような、生み出すような「設定」を、この『euphoria』は持っていて、そこが素晴らしくて、エロかった。そもそもエロゲの構図の縮図であり、それがエロさに直結しているというのが素晴らしいですね。たとえば2004年にPULLTOPよりリリースされた『お願いお星さま』というタイトルも、『euphoria』と同じようにエロゲの縮図的だったりします。

お願いお星さま 廉価版

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主人公と幼馴染の女の子達の元に、ある日空から星が降ってきて、その星は願い事を叶えるという力を持っているのですが、願い事は(主人公たち関係ないところで)既に決められていて、それが全部エロいことで、しかし星は願い事を叶えるわけでして、つまり結果、”主人公たちは願い事である=星に設定されている「エロいこと」を半ば強制的にやらされる”、ということになるのです。この構図は「エロゲ」に対するある種の皮肉じみています。結果的に、ゲーム内の主人公たちは、エロゲプレイヤーの願い=欲望を叶えさせられている。プレイヤーの「エロ見たい」という願いを、主人公たちが勝手に強制的に叶えさせられているということです―――実はそれ自体は、ありとあらゆる殆ど全てのエロゲもそうなのですが(エロを見たいというプレイヤーの欲望を結果的には/形の上では主人公たちが叶えている、半ば・ある種・事実上は「強制的に」)、しかし『お願いお星さま』は、それを目に見える形として顕現させてしまっています。
euphoria』と違って陵辱とかは無いので安心な分基本的にヌルくなっているのですが、しかしこれもまた相当にエロいタイトルでした。強制的にHさせられるという点で主人公/ヒロインとプレイヤーが同じ立場に立った上で、実はお互いの利害が一致しているというところなど最高です。『お願いお星さま』が上手いのはですね、たとえば「エロが見たい」「恋愛が見たい」というのはプレイヤーの欲望であって、その願いを主人公やヒロインが事実上強制的に叶えることになるのがエロゲの構図なのですが、同時に、「エッチがしたい」「恋愛がしたい」という主人公やヒロインの欲望を叶えることにもなっているという点もちゃんと拾っていることです。そう、つまり、エロが見たい/恋愛が見たいというプレイヤーの(潜在的な)願いを主人公とヒロインが叶えてるというのは、同時に、エッチしたい/恋愛がしたいという主人公とヒロインの(潜在的な)願いをプレイヤーが叶えていることでもあるPULLTOPはたまにメタいことかましてくるのですが(たとえば『てとて』のラストシナリオのように)、この作品でもそれは遺憾なく発揮されていて、エロゲの構図の縮図とでも言うものを、このように完璧かつ誰もが満足できるように(願いが叶うように)構築している。


そんな感じで、ただエッチするだけじゃなくて、エロシーンのテキストや絵に力を入れるだけではなくて、このように「何故Hするのか」「どのようにHするのか」「そういうHをする必然性は何処にあるのか」、そういったところに力を入れてる作品のエロさは最高だと思うのです。物語やシステムや設定というのは、エロと分離されているものではなくて、エロを増幅させるものでもある。物語やシステムや設定をエロに回収できれば、それは最高じゃないだろうか。たとえばエロ漫画でもですね、ボクは正直、岡田コウ先生とクジラックス先生さえいればあと100年は戦えるという感じなのですが、このお二方が素晴らしいのは、当然その画力が最高というのもあるのですが、それと同時に、彼らの漫画における物語や設定といったものが「エロに回収できる」という点が素晴らしいのです。たとえば岡田先生は妹モノやNTRモノが多いですが、前者は恋愛性や近親相姦なところを、後者は罪悪感や辛さを、見事なまでに「安全な痛み」のレベルまで研磨していて、それをエロに活用している。「浮空」とか、本当はそうではないのに奇妙なまでに淡白さを保っているのがまた素晴らしいわけです(引きずってどろどろしないで、まるでセミのひと夏の恋みたいに殺されるところが素晴らしい。そうでない方が彼女の望みであるというのが分かりきっているにも関わらず)。クジラックス先生も、その点に関しては気が狂ったレベルの天才。てゆうか「ロリ裁判と賢者の石」という常人では思い浮かばないようなタイトルをエロ漫画に付けてる時点で気が狂ったレベルの天才じゃないでしょうか。なにそのタイトル。その「ロリ裁判と賢者の石」は、物語も設定もまさに天才の仕業としか思えない領域のシロモノなのですが、しかしそれらをエロに回収することが出来るというのが最高に素晴らしいのです。イカれた裁判制度と、最後の新聞に垣間見える気の違った社会が、傍聴席の変態どもの欲望と、少女の確固たる復讐心と、レイプ犯の存在と合わさって、最高にアツいエロを現前させています。あれ最後のレイプ犯に対する死刑判決が「投石」なのがウケますね(「賢者の石」はそこにかかっています)。あのページまでに抜いて賢者モードに入った我われは善良な人間の顔して石投げますし、同時にあの陵辱で抜いた我われは見ず知らずの奴らによる投石を喰らわなければならない。そういうところがエロいんですよ。

エロゲも同様に、物語やシステムや設定が、エロに対して上手く作用している時、それは最高である。たとえば『euphoria』の「設定」は、そういう点で最高だったという話です。とはいえ、最初に「エロが良いんだけど正直惜しい」と書いたのは、罪悪感も責任感も完全に浮遊しちゃってるからこそ、もっと酷く・激しくした方がよりエロかったんじゃないかな、と思ったからでもありました。原理的にはですね、『グランド・セフト・オート』なんかと一緒なんです。一般ゲームもまた、そのジャンルによる要請や設定をプレイヤーに強いてきます。たとえば銃で人を撃つなんてとんでもないと思ってる方でも、FPSはじめたら、銃で人を撃たなくてはならない。だってそうしないと話が進みませんからね。モンスター殺すなんてヤダよ、みんな仲良くしようよと思ってる人でも、「モンスターハンター」やったら、モンスターを殺さなくてはならなくなる。そうしないとゲームが進まないので。つまりゲームの設定上、そのようなことをするのが「強いられている」。だから、強盗や人殺しなんてとんでもない、絶対やりたくないと思っていても、『グランド・セフト・オート』をプレイしたら、強盗や人殺しを絶対にしなくてはならなくなる(それが嫌なら、ゲームを進めない、ゲームをやめるという選択肢しかなくなる)。ここで順番を間違える言説が昔よくあったんですねー。たとえば、「恋愛ゲームのプレイヤーは恋愛を望んでいる(だからゲーム内では恋愛が描かれる)」。それは半分以上正しいかもしれませんが、完璧ではありません。もしプレイヤーが恋愛を望んでいなくても、恋愛ゲームをはじめたら”強制的に恋愛をさせられる”ということが、恋愛ゲームがプレイヤーの強制しているルールなのですから。プレイヤー個々人の願望や欲望は、ゲームそのもの(ジャンルそのもの)とは切り離されてもいるのです。たとえば『GTA』をプレイする人は強盗とか人殺しがしたいから『GTA』をやる、FPSをプレイする人は人を撃ち殺したいからFPSをやる、―――まさかですね。それじゃ『ドラクエ』をプレイする人は勇者になって世界を救いたいから『ドラクエ』プレイしているのか、レースゲームやる人は実際の車が運転したくてレースゲームをやっているのか。そういうわけではない。そういう願望・欲望を持ち合わせている人も勿論いるだろうけど、それ以前に、こっちが何を思って考えていようと、”そういうことをするのを強制的してくる”のがゲームなわけです。
そこを上手い具合についてくる『euphoria』は最高だったのですが、しかしこういう構造というのは罪悪感や責任感を究極的には棚上げにしてくれるので(だから人々は安心して『GTA』で殺人や強盗を犯せるし、もっと過激に・もっとリアルにという方向に走れる。たとえば『GTAライク』なゲームで、歩道にいる人々を轢き殺せないゲーム(そういう規制が日本版で入るゲーム)に対する批判などはどうだろう。別に人々は、本当は歩道にいる人間を轢き殺したいという欲望を持っているから批判しているわけではない。せっかくの過激さが失われることに批判しているのだ(欠損表現規制などに対する批判に関しても、それに近い赴きもある))、なので『euphoria』も、もっと酷く・もっと激しくしてくれた方が個人的には良かったかなと思ったのです。まあストーリー上それが難しいというのは分かるのですが。


で、このように「設定」をエロに上手く絡めて・エロに回収できるように作られている作品はエロくて最高なのですが、それは「システム」や「物語」でもまた同様です。たとえば、いわゆる黒箱系(陵辱とかそっち方面)ってあまりやらないのでなんかピント外れたこと言っちゃうかもしれませんけど、自分が一番お世話になった黒箱タイトルとして『輪[妹]姦〜傷モノの妹〜』があります。

輪姦-傷モノの妹- (美少女ゲーム・ベストシリーズ)

輪姦-傷モノの妹- (美少女ゲーム・ベストシリーズ)

女の子が脅迫されて凌辱されまくって肉奴隷的にされちゃうお話でして、絵やテキスト・物語の構成や流れ、それらが素晴らしくてそれだけでも十分実用的なのですが、「システム」がまた良くてですね。女の子にどんなプレイを強いるのかを、スゴロク形式とかフローチャート形式とかスフィア盤みたいな形式で選んでいくのですが(参考(攻略ページ): http://anemonecosmos.x.fc2.com/kouryaku/kouryaku_rinkan.html )、これがなかなか思い通りにいかない。輪姦だの自慰だのアナルだのジャンルを選べるようになっているんですけど、ジャンル以上のものは選べないわけです。自慰を選べば自慰に絡んだ、アナルを選べばアナルに絡んだことを当然するのですけど、それがどういった内容になるのかは選んで見なければ分からない。挿入が見たくても選んでみなければ挿入があるかどうかも分からないし、輪姦なんて1〜5まであるのにその内の2〜5はほぼ使いまわしですw そもそもこれ「誰が選んでる」という話でもあって、ゲームは最初から最後まで一貫して女の子視点で進みますので、じゃあこの選択肢は誰が選んでいるんだという話でもあります。そこがまた良いのです。女の子は理不尽に強姦魔たちに振り回されるという話ですが、同時に我われもまたエロに関してはシステムに振り回されるわけである。勝手に話が進んで勝手にエロがはじまるのではなく、なまじ選べる形式になっているからこそ余計にそう感じさせます。しかもこのゲーム、妙に難易度が高いという面もある。通常のエロゲのように選択肢選んでいくタイプ&前述のフローチャート形式なので、一見するとそこまで難易度高くなさそうなのですけど、実際は何処でフラグが立つのかさっぱり分からないような内容になっています。やー、このゲームには姉ルートとか親友ルートもあるのですが、自分の場合は、何処でフラグ立つのか全然分かんなくて100周くらいプレイして先日ようやく辿り着きました。ハッピーエンドみたいなのもあるらしいのですが、未だそこには辿り着けていません。これが最高なのです。つまり、「いつ終わるか分からない凌辱」「どうやって抜け出せるか分からない凌辱」という彼女の状況と同じように、「いつ終わるか分からない」「どうやって抜け出すか分からない」状況を、攻略難易度という点でプレイヤーにも与えている。それも見るからに難しそうとか、あからさまに理不尽とかではなく、一見すると簡単そうなのに実は難易度高くて抜け出せない、というのが良いのです。それによって、プレイヤーもこの「抜け出せなさ」に引きずり込まれていく。まあ攻略サイトとか見ながらやれば話は別になるんですけど、しかし何も知らないではじめれば、(偶然上手くいく/あるいは総当りで別ルート見つけない限り)いつまでもこの凌辱の嵐に囚われることになる。つまり「終わりない凌辱」というのを、半ば偶然ですけど、システム上で再現しているのです。


そういったゲームです。エロシーンが、ただその場面のテキストとその時のCGのみによって構成されるのではなくて、たとえば「設定」が、「システム」が、エロさを増幅させる幻想となって密接に絡まってくるゲームが最高なのです。それは勿論「物語」にも言えます。物語とエロシーンをどのような関係に持ってくるか……物語によりエロシーンのエロさをどうやってアップさせるか。この辺はいわゆる「抜きゲー」に限らず色んなゲームで感心させられる場合があって、たとえばこの青空に約束を―みたいなシナリオゲーやら萌えゲーやらでも、十分凄いなと思わせてくれます。『こんにゃく』は基本的には普通のエロシーンなのですが、しかし会長シナリオは物凄くて、あれは言うなれば限界まで弓を引き絞ったみたいな感じで、さんざんお膳立てをしまくって舞台を整えまくってキャラの心情をそこに持っていきまくって「ついに来た」なエロシーンだったので、これもうエロい、オナれる、なんてのを通り越して、「モニターの前にいる俺もパンツ脱がないと失礼である」と思えるレベルでした。ここまでのエロシーンに対して、素でプレイするなんて失礼でしょう、抜かなくてもせめてパンツぐらいは脱げ、それが礼儀ってもんだ。そう思える出来栄えだった。『キッキングホース☆ラプソディ』ののばら初回Hもヤバかったですね。たとえ抜く気がなくても抜かないとならなくなるレベル。これもまたさんざんお膳立てして舞台整えてキャラの心情も最高潮にしてエロシーンに突入するので、「ここで抜かなかったら俺はこの先何で抜くんだ?」と自問自答してしまう出来栄えでした。また『はるまで、くるる。』キチガイじみていまして、てゆうかアレ、エロシーンで作品テーマ的に重要なことをガンガン進めるんですよ。それがエロい。エロゲのエロシーンには、たまに、「このゲームは1ヒロインにつき4回のエロシーンがあるので、うーん最初のHと2回目のHはちゃんと大事な行為で必然性もあって主人公もヒロインも燃えてたしHのネタも充実してたんだけど、あとの2回はHのネタもないしHする意味もなんもないんだけど、まあいいや適当に入れちゃえ」―――という過程を経たのかどうかは定かではありませんが、そうなんじゃないかと疑いたくなるくらいの、ただ「エロゲなのでエロシーンが無いといけないので入ってるだけのエロシーン」がまれにあります。その対極に位置するのが『はるまで、くるる。』みたいなエロシーンで、セックス全てに意味がある。ただ物語的にどうこうって話じゃなくて、ちゃんと「セックスすることに意味がある」のがすげーのです。勿論普通にエロシーンとして見てもエロいのですが、さらに、何故人間はセックスするのか、よく言われてるような、身体のつながりとか心のつながりって一体どういう意味なのか。そういったことに対する解答まで入っている。ちょっとアレは凄いです。完璧すぎます。まあ完璧すぎて(完全に主人公とヒロインのモノになっているHなので)プレイヤーがオナるという形ですら参入しにくいかもしんない、という欠点も無きにしも非ずですが。

この青空に約束を- 通常版

この青空に約束を- 通常版

キッキングホース★ラプソディ 普及版

キッキングホース★ラプソディ 普及版

はるまで、くるる。

はるまで、くるる。

ちなみに『はるまで、くるる。』は、個人的には今までやった全てのエロゲの中で二番目に好きで高評価で良かったゲームでしたのでみんな買えと事あるごとにステマしてるのにボクの観測範囲の人たちは全然手をつけてくれないのでまだまだしつこくステマする。これ最高だぜ!(ちなみに一番は「C†C」です)。


さてここまで長くなりましたが、最後に、物語とエロとの合致という意味では世界最高峰だとボクが信じて疑わない夏めろ』『シスターコントラスト』の話をしましょう。以前にも書いたことの焼き増しになりますけど、このゲーム最高だから仕方がない。どちらもAcacia Softというメーカーからリリースされ、木之本みけという天才がライターを務めた作品です。

で、この方の作品といえば、尿ジョッキやら包茎へのこだわりやら何やらと名前を聞いただけで五体投地したくなるような変態さ盛り沢山なのですが、その辺全部ちょっぱって『シスターコントラスト』と『夏めろ』の、物語とエロとの融合のヤバさを語ります。まず『シスターコントラスト』。条件が整うとヒロインキャラ視点から彼女の心情やら彼女のオナニーやらが展開されるというシステムが搭載されているのですが、それがライターさんのテキストの上手さと噛みあって神がかっています。女の子の主人公への想いや性への関心、そういうのが絶妙な倒錯具合で描写される。そもそもこれは、根本的には「窃視」の機構により成り立っています。一般的な「覗き見」と窃視との違いは、窃視の場合、常に、見られている向こうもこちらを見ている(のではないだろうか)という点にあります。深遠を覗くときは深遠さんの方もこっち見てんじゃね? という有名な言葉がありますが、それと同じように、ボクたちはこのゲームでヒロインのオナニーを窃視しているのだけど、オナニーしているヒロインもこっちを見てるんじゃね? という予感が付き纏うのです。どういうことかというと、彼女たちは常に、こちらの欲望を見ているんじゃないかというくらい、プレイヤーの欲望をあからさまに満たしていくのです。彼女たちが見ているのは僕たちの欲望です。木之本みけ先生は本当上手いと思いますね。このゲームにおいては、テキストが上手いことプレイヤーの欲望をコントロールしている。テキストが上手いこと、ここでこうなればいいな・こういうエロが欲しいなとプレイヤーの心理を誘導して、そしてそれをゲーム内で実現させている。つまり、「彼女たちがプレイヤーの欲望であるそれを、彼女たちの願望であるそれを実現して、それをプレイヤーが窃視的に見る」という、この世に二つとない倒錯しまくった性的欲望の昇華をここに実現させてしまってたのです。このエロさはヤバイです。おかしいです。ここまで綺麗に構築されたエロというのはまずお目にかかれません。なので皆さん、買え・やれ・抜け。

シスターコントラスト!Acacia3800シリーズ

シスターコントラスト!Acacia3800シリーズ


続いて夏めろ。これねー、今ちょっとプレイし直したのですけど、やはり偉大すぎて説明できない。と言いつつなんか書くと、「全てがエロに回収可能なくらいである」というのが本当偉大なのです。たとえば橘花なんかは、「相手に自分の理想を投影」というのが物語における一つのキーワードになっているのですけど、それすらもHの時はお互い相手に欲望を投影して自分の性欲を満たしたりしているわけで、そういうところがたまんないのです。「幼い恋心の危うさ」「そういうセックスの危うさ」に対しゲーム内で正面から突っ込みを入れてるにも関わらず、それを貫き通す。なんか数ヵ月後くらいにこの二人普通に別れててもおかしくなさそうな危うさがあるのだけれど、だからこそ(それでも)セックスの濃密さが光る。他にも、たとえば中里シナリオなんかもヤバくてですね(てゆうか全シナリオ全エロシーンやばいのですが)、もう説明しようがないのでテキスト引用しちゃいますが、

徹生「しょ、処女じゃないって言った……!」
俺は焦った。
中里の初めてを奪ってしまった……!
美夏「や……やーい……。引っかかった……」
中里は痛がりつつも、ふざけた声で俺をからかった。
徹生「な……。引っかかったって……」
美夏「だって、深町……。初めてだって言ったら、やめちゃうでしょ……?」
美夏「このトシで処女なのも……恥ずかしいしね……」
美夏「こうなったら……最後まで……しようよ……?」
美夏「深町となら……いい思い出に、なりそうだし……」
美夏「深町も……出したいでしょ……?」
美夏「あたし誘惑しちゃったし……あたしのカラダ……好きにしていいよ……」
徹生「そ、そうなのか……?」
俺はそんな間抜けな返事しかできなかった。
そんな話をしている間にも、中里の膣内は俺のものを柔らかく締め付けて、もどかしくてたまらなかった。
動かしたい……。もっと中里を感じたい……。
中里の子宮に精液を注ぎ込んで、俺のものにしたい……。
そんな気持ちでいっぱいで、中里の言葉を深く考える余裕もなかった。
根元まで押し込んだら、もう一度手前へ……。
徹生「はぁ……はぁ……中里の処女、もらっちゃった……」
親友なんだし、そのくらい役得があってもいいよな?
そんなわけの分からないことを考えながら、俺はゆっくりと腰を前後させる。
(中略)
徹生「だんだん……出そうに……なってきた……」
俺は中里に射精が近いことを告げる。
徹生「中に……いいよな……? 親友だもんな……」
中に出したくてたまらなくて、俺はわけのわからないことを言いながら中里の腰を引き寄せた。

親友関係ねー! これが物語と絶妙に絡まって最高にエロいのです。その後も、「お前は俺の性欲処理係だ(こいつ多分Mだからこんなこと言っても大丈夫だよな……?)」とか言い出したりしてマジ最高です。あーもうなんだろう、こういう書き方で伝わるでしょうか。伝わらないですよね。もう正直、みんなやって下さい、プレイして下さいとしか言いようがありません。
たとえばですね、この作品、共通ルートはたいていのエロゲと同様にプレイ時間にして5時間くらいあるのですが、個別ルートが1時間強しかないのです。もちろんエロシーンも全部入れて1時間。しかし1時間しかないのに、普通のエロゲと同じように、女の子とデートして喋ってさらに仲良くなって、女の子の抱えているトラウマが出てきてそれを主人公が解決してあげて、かつ当然エロシーンが4回くらいある、という一般的なエロゲ個別ルートのフォーマットを踏まえています。一般的なエロゲは個別ルートが3〜5時間くらいの長さでして、その中で色々やるわけです。しかし『夏めろ』は1時間しかありません。普通のエロゲと同じように描くには尺が足りていません。しかもエロシーンが4回くらいあって、それぞれ10分くらいのシーンと考えると、残された時間は30分くらいしかないのです。その時間だけでデートしてイチャイチャして話すすめてトラウマを解決して、なんて常識的に考えてムリでしょう。なのでこのゲームは、纏められるところは一つに纏めてしまいました。つまり、セックスしながらトラウマを解消するのです。はっきり言ってこれが頭おかしいくらいエロい。肉体的な快感と精神的な快感と、肉体的な繋がりと精神的な繋がりが、もうなんか爆発しちゃっています。トラウマ解消以外にも、歪みを押し付けたりとか、キャラのアレな面が十全に出ていたりとか、このゲームのエロシーンやばすぎです。単に愛撫して挿入すればエロいのではなく、その行為を「そのもの以上の何か」に見えるようにする幻想こそがエロにおいて重要なのだ、みたいな話を上のほうで書きましたが、そういう意味では『夏めろ』は最強です。だって全てのエロシーンが「ただのセックス以上の何か」であるのですから。これほどまでにエロいエロゲーは存在しないでしょう。
そもそも『夏めろ』は初期設定としてエロ設定といいますか、たとえばエロゲというのは、「偶然」と「鈍感」という不文律によってイベントを回して物語を進める場合が多いですよね。やけに都合の良い偶然が起きたり、やけにキャラが鈍感だったり、そんな場面は腐るほどある。このゲームはそういうのをなるべく排除して、もっとリアルなものをそこに詰め込んでいます。それは「欲望」と「身勝手」さ。思春期の少年少女の欲望と身勝手さが空気のようなレベルで作品内に満ち満ちているので、ぶっちゃけるともうそれだけでエロいのです(思春期男子・思春期女子の欲望、すなわち「エロ」が、そして身勝手さが、世界観の根幹に置かれている!)。そこにおいて、ありとあらゆるセックスに意味を持たせてしまった。セックスとトラウマをくっつけるし、セックスで思春期男子/思春期女子の歪みが表現されるし、セックスで人生が変わるし。こんなイカレた采配をしてしまっているから、だから余計にエロい。もうわけわからんほどエロい。恐らくエロゲにおいてはこれと同じようなエロというのは存在しないんじゃないでしょうか(もし存在してたら是非是非教えてください)。アルティメットワン、この世で究極のエロがここにある。なので皆さん、買え・やれ・抜け。

Acacia3800シリーズ 夏めろ

Acacia3800シリーズ 夏めろ

これは全員買うべきです。だってほら、100万枚くらい売れればみけたん帰ってきてくれるかもしれんし……。


ということで、長々と書きましたが、何が言いたいのかというと、よく「エロ」と「物語」(あるいは設定やシステム)は全く別物のように分断して語られることが多いですけど、決してそういうわけではないということです。泣きゲーやら燃えゲーやらに代表される物語系のゲームと「エロ」は全く別の世界の存在のように語られることが多いけど、それらは決して関係ないものでも分離しているわけでもましてやお互いがお互いを生かせないものでもない。勿論、抜きゲーにおける物語というのもまた同様です。上に書いた『夏めろ』がまさにそうであるように、物語がエロをさらに高めることもあるし、エロが物語をさらに高めることもある。「物語」の部分を「設定」や「システム」に置き換えても一緒です。エロゲにおいて「エロ」と「他の要素」は、元々分離されているものでも、別々であるべきものでもありません。お互いがお互いを高められるのです。
あとついでに、てゆうか、今回の文章で最も重要で一番言いたかったことなのですが、誰か他にも物語や設定やシステムを上手い具合エロに絡めて素晴らしいことになってるエロゲがあったら教えてください。出来ればロリ系キャラが多くいる作品、貧乳キャラが多くいる作品でお願いします。マジで。『夏めろ』みたいなのだったら明日すぐ買いに行きます。

*1:勿論例外はありまして、たとえばかの有名なエロイッカイダケ=『きっと、澄みわたる朝色よりも、』なんかは、その点においてはめちゃくちゃ評価できます。「攻略対象ヒロイン全員とセックスしろ〜」というジャンルの要請をブッチして、メインヒロインであるひなとしかセックスをしないというのを貫き通しているのですから。ジャンルの常識よりも、ユーザーの要望よりも、物語やキャラクターの「セックスをしない必然性」の方が上回り、それを実際に為した。是非はともかく、そういった姿勢を貫き通したという点だけは少なくともめちゃくちゃ評価できる。